クラリネットの音質向上!呼吸を鍛えるロングトーン集中方法

演奏テクニック&練習法

クラリネットを吹いていくと、「音が不安定」「息が続かない」「響きが浅い」という悩みが出てくると思います。

これらの原因の多くは、技術面の問題ではなく「ロングトーンの習慣化」が不足していることがほとんどです。ロングトーンは地味に見えて、実は音色・息の流れ・体の使い方を総合的に育てる最も効果的なトレーニングです。

この記事では、初心者から再開組まで実践できるロングトーン強化法を、筆者の体験談とともに紹介します。

なぜロングトーンが上達の近道になるのか?

ロングトーンは単純な「息を長く出す練習」ではありません。息のスピード・肺の圧力・口の形(アンブシュア)・姿勢のバランスを同時に整える、体全体のトレーニングです。

特に、息の流れを安定させることで音質のムラが減り、自然なビブラートも身につきます。音をまっすぐ支える力を育てることこそ、クラリネット上達の最短ルートです。

筆者のロングトーンでの失敗談

ロングトーン練習の大切さと「痛感」した話

高校生の頃、部活動でクラリネットを続けていました。当時の自分は「もうロングトーンはできている」と思い込み、基礎練習を省いてしまっていました。ところが、演奏会の練習中に先生から「音が前に出ていない」と指摘され、録音を聞き返すと自分の音だけが薄く揺れていました。

慌てて翌日から毎朝10分のロングトーンを再開したところ、2週間程で音の芯が戻り、2ヶ月後には明らかに響きが増したのを感じました。この経験で「音の土台はロングトーンが支えている」と痛感し、二度とロングトーン練習をさぼらないようにしようと強く思いました。

ロングトーン練習の「力」を実感した話

子育てで演奏から離れていた時期があり、約2年ぶりにクラリネットを再開しました。最初に感じたのは、肺の容量が落ち、音の立ち上がりが明らかに鈍くなっていることでした。

最初の1週間は、わずか8拍のロングトーンすら苦しく感じるほど。それでも「毎日10分だけ」と決めて続けると、呼吸の筋肉が少しずつ戻り、3週間後には音が安定してきました。

音に深みが出て、友人から「前よりも柔らかい響きだね」と言われた瞬間、ロングトーンの効果を改めて実感しました。

今日からできる!ロングトーン徹底強化法

姿勢づくりは“良い音”の第一歩です。

姿勢を整える

  • 肩や腕の力を抜き、体の軸を感じる
  • 顎や首に余計な緊張を残さない
  • 椅子に浅く腰をかけ、重心を真っすぐ下に意識する

この姿勢を習慣化することで、音の支えが自然に安定します。鏡を使って背筋や楽器の角度を確認すると効果的です。

無理なく吹ける長さで始める

まずは「8拍」から開始しましょう。目的は「長く伸ばすこと」よりも、「一定の音を出すこと」「息のスピードを均一にすること」、「しっかりと響かせ、一定の音色で」吹くことを意識しましょう。

ロングトーン練習メニューの具体例

ウォームアップに!ブレストレーニング(5分)

まずは、ブレスコントロール、腹式呼吸の練習から始めましょう。

  • 4拍で吸って → 4拍息を止める →  8拍で吐き切る
  • 4拍で吸って → 4拍息を止める →  12拍で吐き切る
 お腹(下腹)に力を入れて、息の流れを一定に保つことを意識します。

 基本のロングトーン(10分)

  • 中音域の「ソ」から始める
  • 1音につき 8〜10秒 を目安に伸ばす

音の始まりと終わりまで、丁寧に!を意識します。

音域を広げる(10分)

  • 中音域から低音の「ド」まで1音ずつ下がる
  • 中音域から高音の「ド」まで1音ずつ上がる
  • 低音「ド」〜高音「ド」まで、1音ずつ上がる

ダイナミクス練習(5分)

  • 同じ音を 弱→強→弱 と変化させる

息の強弱をコントロールすることで、表現力のアップにつながりますよ!

クールダウン(3分)

  • 好きな音をゆったり伸ばして終える

「今日の音」を確認して気持ちよく練習を締めましょう。

ロングトーンチェックリスト

基本姿勢

□ 背筋はまっすぐ伸びている

□ 肩の力は抜けている

□ 首や顎に余計な力が入っていない

□ 椅子に浅く座り、足裏が床にしっかりついている

□ 楽器の角度が安定していて、無理な持ち方をしていない

アンブシュア(口の形)

□ 下唇が巻き込みすぎていない

□ 口角が横に開きすぎていない

□ 上下のバランスが左右均等になっている

□ 顔のどこかに力が入っていないか確認

息の準備

□ 深く、ゆっくり息を吸えている

□ 息を「押し出す」ではなく「流す」イメージができている

□ 音を出す前に、指・口・姿勢が整っている

続けるための工夫

ロングトーンは地味ではあるので、途中で飽きたりサボったりしたくなることもあります。私自身も、学生時代、何度も「今日はやらなくてもいいかな」と思ったことがありました。そんなときに役立った工夫を、体験談とともにご紹介します。

録音して「音の成長」を楽しむ

最初に録音し、自分が思っているよりも、きっと下手に感じることと思います。私も初めて録音したときは、音が揺れていて聞くのが恥ずかしいほどでした。 でも、これが大切! 自分の音を客観的に聞くことで、どこを修正すればいいかがわかってきます。

3週間後も続けると、音が太くなり、安定しているのがはっきり分かりました。自分の成長を耳で確認できると、練習が楽しくなります。

タイマーアプリでゲーム感覚に

練習を継続するコツは「小さな達成感」です。タイマーアプリを使い、「10分だけ集中」と区切ることで心理的ハードルが下がります。終わったあとはチェックシートに丸をつけるなど、小さな仕組みを作ると継続率が上がります。

鏡を使ってアンブシュアをチェック

鏡を見ながら吹くと、自分では気づかない癖が分かります。 これは、まだ初心者のころ、中学生の頃に先輩に教えていただいた方法ですが、鏡を使ってみたら口角が横に開きすぎていることに気づきました。

修正しただけで音の安定度が大きく変わり、「やっぱり基礎は大事だ」と再確認しました。慣れてきてからも、時々、チェックしてみることをおすすめします。

仲間や家族に聴いてもらう

一人で練習していると飽きてしまいますが、誰かに聴いてもらうと励みになります。 私は家族に録音を聴かせて「前より柔らかい音になったね」と言われたとき、とても嬉しくて「もっと続けよう」と思えました。小さな一言でも大きなモチベーションになります。

「ご褒美」を設定する

練習を終えたら、自分なりのご褒美を決めると習慣化しやすいです。 高校時代、私は「ロングトーンを終えたら好きな曲を1回だけ吹いていい」というルールを作っていました。これが楽しみになり、毎日続けられました。

こうした工夫を重ねていくうちに、ロングトーン練習そのものが大好きになりました。 「音が育っていく過程を感じられる」「昨日より今日の音が良くなっている」と実感できる時間は、私にとって特別な喜びです。今では、ロングトーンは退屈な基礎練習ではなく、自分の音を磨く楽しみの時間になっています。

まとめ

私自身、何度もロングトーンを軽視して失敗しましたが、真剣に取り組んだときにこそ「音が太くなる」「安定する」「響きが豊かになる」という確かな上達を実感しました。

ロングトーンは、派手さはないけれど最も確実な上達法です。音の太さ、息の流れ、響きの質は全てロングトーンに集約されています。「1日10分の集中練習」を続ければ、音が変わり、演奏の自信がつきます。今日から、自分の音と向き合う習慣を始めてみませんか。

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