クラリネットを始めてから20年以上。中学・高校の吹奏楽部で過ごした青春の日々、社会人になってからは、社会人バンドへの参加、アンサンブル活動、そして家族と音楽を楽しむ時間——私の人生には常にクラリネットが寄り添ってきました。
その中で、海外のクラリネット教育に触れる機会があり、日本との違いに大きな驚きを覚えました。今回はその経験をもとに、「クラリネット教育のあり方」について考えてみたいと思います。初心者の方が学び方を選ぶ際の参考にもなるはずです。
日本のクラリネット教育:合奏を中心に育つ文化
日本ではクラリネットを始めるきっかけとして、吹奏楽部への加入が一般的です。私自身も中学入学と同時に吹奏楽部へ入り、合奏を中心とした練習に毎日取り組みました。
日本の部活文化の特徴は「団体で音を揃えること」に重点がある点です。顧問の先生は音楽以外の教科専任であることも多く、音楽理論や個人表現の指導は限定的となりがち。
例えば、部活での練習記録には「音程」「リズム」など数値化できる項目が優先され、ソロ演奏や自分の解釈を深める時間はごくわずかでした。「基礎練習」中心の教則本が多く、“どの曲でも同じような吹き方”になってしまったことも実感しています。それでも、仲間と息を合わせ、1つの音楽を作り上げる達成感は素晴らしいものでした。
近年は、個人の力を伸ばすための講習会なども増えていますが、根本に「合奏重視」の文化が根付いていると感じます。
海外のクラリネット教育:個性と表現を伸ばすスタイル
欧米をはじめとする海外では、クラリネット教育が“個人主義”に基づいていることが強く印象に残りました。現地の音楽教室で、小学生からプロ奏者による個人レッスンを受けるのが当たり前。
私は、現地で体験したレッスンでは、先生が「この曲、君はどんな感情で吹きたい?」と何度も質問し、演奏中に即興でアドリブを求められる場面もありました。
技術よりも「自分らしさ」「音楽的解釈」に多くの時間を費やします。また、レッスン終わりには録音して自分の音を細部までチェックする習慣が根付いていました。
ジャズやポップスへの挑戦も奨励され、「自分だけの音」を追い求める姿勢が自然と養われます。リードや楽器選びにも強いこだわりがあり、先生ごとに勧めるスタイルが異なるのもユニークです。
音の違いに表れる教育の背景
初めて海外奏者のソロステージを聴いたとき、「クラリネットなのに、こんなに音が違うのか」と驚きを隠せませんでした。
日本の奏者の場合、明るくクリアな音色で全体に溶け込むタイプが多いですが、海外奏者は低音から高音まで深み・厚みがあり、響きが個性的。例えば某国の若手奏者は、クラシックでも即興でジャズフレーズを入れるなど唯一無二の音作りをしていました。
これらの違いは、教育方法や重視する価値観(“調和”と“個性”)の差が大きく影響しています。実際の体験から言えば、「同じ楽器、同じ曲でも、教わる環境で“音”そのものが全く変わる」と確信しています。
どちらが良いではなく「どちらも知る」ことの大切さ
日本の吹奏楽教育は「チームワーク」「基礎力」に優れ、海外の教育は「表現力」「音楽的自立」に強みがあります。
私自身、両方のスタイルで学ぶことで「音楽観」「自信」「楽しみ方」が大きく広がりました。読者の皆さんにもおすすめしたいのは、ひとつの文化に縛られるのではなく、両方のメソッドや考え方に目を向けること。
そうすれば、クラリネットだけでなく音楽そのものがもっと自由で、創造的な活動になると実感しています。
初心者さんへのヒント:学び方を工夫しよう
クラリネットを始めたばかりの方にとって、教育の違いはすぐに体験できるものではないかもしれません。しかし、次のような工夫で両方の良さを取り入れることができます。
両方の教育法の「良いとこ取り」をするのがコツです。
吹奏楽部やアンサンブルでリズム感や協調性を育てる
好きな曲をソロで吹いてみる、録音して自分の音を聴き返して、自分の音色や表現力を引き出す
クラシックだけでなく、ジャズやポップスにも挑戦してみる
「このフレーズはどう表現すればいい?」と積極的に聞いてみる
こうした方法で徐々に“自分らしい音”を育てていきましょう。私自身もこのアプローチで演奏への自信が飛躍的に増しました。あなたも、ぜひ楽しみながら一歩ずつ挑戦してみてください!
これからのクラリネット教育に望むこと
今後は「多様なジャンル」「個人レッスン」「自己表現」を大切にした教育が広がってほしいと考えています。日本の文化は素晴らしいですが、もっと「自分にしかできない音」や「新しい音楽体験」を積極的に取り入れてもよい時代です。
例えば室内楽やジャズ、YouTubeでのセルフ発信、海外奏者との交流など、音楽の可能性は無限です。そして何より、技術や理論だけじゃなく「心から楽しむ気持ち」こそが、クラリネットを続ける最大の原動力になると感じます。
まとめ
クラリネットは、音を通して人とつながる楽器です。教育の違いを知ることで、より豊かな音楽の世界が広がります。初心者の方も、ぜひ「合奏の楽しさ」と「個人表現の面白さ」の両方を味わってみてください。
今日も私はクラリネットを吹きながら、音楽の奥深さと楽しさを改めて感じています。
- あなたがクラリネットで目指したい音はどんな響きでしょうか?
- 合奏とソロ、どちらにより魅力を感じますか?
- もし新しいジャンルに挑戦できるとしたら、どんな音楽を選びますか?
ぜひ、自分の音楽体験と重ね合わせて考えてみてください。きっと、クラリネットの楽しみ方がさらに広がるはずです。




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