吹奏楽や市民楽団に所属していると、練習の中心はどうしても「合奏」になります。
そのため、“ソロ曲に挑戦するきっかけがないまま数年が過ぎてしまった…”という方は少なくありません。
しかし、実はソロ曲に取り組むことで 音色・音程・表現力・リード選びの精度 が大きく向上し、
合奏の中でも驚くほど音が安定するようになります。
この記事では、クラリネット奏者の視点から
吹奏楽・市民楽団のメンバーにぴったりなソロ曲をクラシック/ポップス/ジャズの3ジャンルで紹介。
「ソロを吹いてみたいけど、何から始めればいいのか分からない」という方に向けて、難易度や選び方も丁寧にまとめました。
ソロ曲に挑戦すると吹奏楽の演奏も上達する理由
自分の音を“客観的に”聴けるようになる
合奏では、複数の楽器が同時に鳴るため、自分の音だけを細かく確認することが難しい場面があります。
しかしソロ曲は、100%自分の音と向き合う時間です。
“あ、この音上がりやすいな”“息が足りてないな”など気づきが格段に増えます。
音楽の流れを自分で作る力が身につく
合奏では指揮者や周りの奏者の動きに合わせることが中心になりますが、ソロ曲では「自分がどう歌うか」「どんなテンポで進めるか」という判断をすべて自分で行う必要があります。
これが表現力のアップにつながり、合奏でも自然と“音楽的に吹ける人”になれます。
リード選びの精度が上がる
弱音や高音など、繊細なコントロールが求められるソロ曲を吹くことで、リードの状態の違いに驚くほど敏感になります。
結果的に、合奏でも安定した音色を保てるようになります。
ソロ曲に挑戦して上達した体験談
最初の1週間で気づいた“息のムダ”
中学2年生で、初めて「ソロ練習を始めてすぐに分かったのは、自分の息のスピードが安定していなかったということ。合奏では周りの音に助けられて気づかなかった細かな乱れが、ソロでは全部露わになります。
特に、ロングトーンの最後で音程が下がるクセや、フレーズの途中で息が足りなくなる場面が多く、「今までこんな吹き方してたのか」とショックを受けました。でも、これが大きな成長のきっかけになりました。
ソロ曲が“音づくりの鏡”になった瞬間
ソロ部分を、毎日の基礎練の後に集中して練習しました。1週間ほどで 音の芯が太くなった実感 が出てきました。
ソロ曲は“音を隠せる場所”がありません。
だからこそ、弱点がはっきり見え、改善スピードが速くなります。
合奏で褒められた!
ソロ曲に取り組み始めて2週間ほど経った頃、先輩から、「音の輪郭がハッキリした」「音の強弱が吹き分けられるようになったね」
と声をかけてもらえました。
ソロパートの練習で、自分の苦手部分と向き合ったことが、演奏に生きているのを実感した瞬間でした。ソロの体験は、
- 息遣いの安定
- 音程のコントロール
- フレーズの歌い方
- 表現力の幅
- 音の立ち上がりや芯の強さ
これらが一気に身につき、合奏でも吹きやすくなり、音に自信が持てるようになります。もし、ソロをされたことがないのでしたら、立候補してでも、一度ソロに取り組んでみてほしいです。
【クラリネット定番ソロ曲】吹奏楽経験者にも選ばれているクラシック曲
サン=サーンス《ロマンス》
クラリネット入門ソロとして最も人気のある1曲。
やわらかい音色を生かせる旋律で「クラリネットっていい音だね」と言われやすい曲です。
ホテルのロビーでミニコンサートをさせていただいたことがあるのですが、その際に、この曲を選びました。お客さまの反応もよかった思い出があります。
プーランク《クラリネット・ソナタ 第1楽章》
哀愁がありつつ幻想的な雰囲気。テンポが比較的一定で、運指の流れも無理が少ないため、“クラシックのソロに挑戦したい中級者”におすすめです。
吹奏楽団でも取り組む人が多い曲です。
シューマン《3つのロマンス 第1曲》
ゆっくりとした旋律が多く、クラリネットの音色を磨くのに最適。
ロングトーン・音のつながり・音程の練習にもなるため、合奏のクオリティも上がります。
こういった曲を選ぶと、自分の音の太さやあたたかな音を目指すことができるため、表現力を磨くことができます。
ウェーバー《クラリネット協奏曲 第1番》
華やかでソロ感満載の名曲。
短い抜粋で演奏できるアレンジも多く、個性も出しやすい1曲。
吹奏楽団の定期演奏会や団内発表会で“挑戦曲”として選ばれることも多いです。”チャレンジ”したい人におすすめします。
ドビュッシー《第1狂詩曲》
難易度は高い曲ですが、挑戦することで、自分の音色・息の流れ・ダイナミクスの幅が一気に広がる曲です。
中上級者がステップアップしたいときの最有力候補です。
【ポップス・映画音楽のクラリネットソロ】市民楽団でも使えるやさしい選曲
久石譲《海の見える街》
クラリネットの柔らかな音にぴったりハマる一曲。
幅広い世代が「耳にしたことがある」曲で、馴染みのあるフレーズですので、依頼演奏や地域のイベントでも喜ばれやすい“鉄板ソロ”。市民楽団の仲間に頼まれて吹くことも多い曲です。
《花は咲く》(アレンジ版)
ゆったりしたメロディで、クラリネットの歌心を出すのにぴったり。
吹いている側も気持ちよく、人前で演奏しても聴き映えします。結婚式などにもいいのではないでしょうか。
ディズニー《星に願いを》
クラリネットの甘く優しい音色が最大限に生きる曲。
吹奏楽団のミニコンサートで取り組む人が多い印象です。
いろんな場面で使える曲です。フレーズを覚えておくと、急に頼まれた時など、こまらない1曲だと思います。
《君をのせて》(天空の城ラピュタ)
こちらも、世代に関係なく、吹奏楽に馴染みのない方にも、好評の曲。クラリネットとしては、音域に無理なく、感情ものせやすく、音程練習にもなるため、合奏の安定感が増します。
【ジャズ・スウィング】吹奏楽クラリネット奏者に人気&“聴き映え”もするソロ曲
◆ガーシュイン《サマータイム》
シンプルな旋律なので、音色と息のコントロールを見直すのに最適。ジャズ初心者でも取り組みやすい王道ソロ。大人っぽい曲ですので、レストランやロビーコンサートなどにおすすめですね。
ベニー・グッドマン《メモリーズ・オブ・ユー》
クラリネットらしい“泣きの音色”が求められる大人の一曲。
スウィングの感じがつかめるので、アンサンブルにも生かせます。こちらも大人っぽい1曲です。
筆者は、高校時代の演奏会で挑戦しました。CDを何度も聴き、イメージを膨らませ、真似をしたり、それでも、雰囲気を出すことに非常に苦労をしました。先生に個人練習をお願いし、朝練・昼練と、ひたすら吹きまくりました。
本番は、中学生時代の恩師も聴きに来てくれ、最高潮の緊張でしたが、吹き切ることができ、拍手をもらったときの感動は忘れられません。

クラシックと違い、ジャズは、まず音源を聴いてマネをしてみることをお勧めします。
ビリー・ストレイホーン 《A列車で行こう》
明るく、軽快で、お客さんが自然と笑顔になるソロ。
アドリブなしでも十分成立し、依頼演奏向けとしても非常に人気です。ジャズの名曲です。
筆者が初めて吹いたのは、中学2年生でした。ソロは先輩が吹きましたが、ソロ部分は聴いている側も楽しく、感動するものでした。
《ムーンライト・セレナーデ》
温かく包み込むような音色が映える、クラリネットに最適なジャズ曲。
ゆっくりした曲なので表現力が磨かれます。レストランなどでの演奏にお勧めしたいです。
ソロ曲を選ぶときのポイント(吹奏楽団員向け)
難易度で無理をし過ぎない
社会人吹奏楽団で活動している場合、練習時間は限られます。
「少しだけ背伸びできる難易度」が一番続けやすく、上達も実感しやすいです。
本番シーンをイメージする
- 団内発表会
- ロビーコンサート
- 依頼演奏
- ソロコンテスト
場所や、観客の客層、シーン・・・、それぞれ相性の良い曲があるので、目的に合わせて選ぶと成功しやすいです。
まとめ
ソロ曲は“合奏では得られない学び”がぎゅっと詰まっています。クラリネットのソロ曲に挑戦すると、自分の音や息の使い方に驚くほど向き合えるようになります。
その積み重ねが、最終的には合奏全体の音を引き上げてくれます。
私自身、学生の頃に、初めてソロをもらったとき、必死に練習したことで「最近、音がよく響いてるね!」「安定した音になってきたね」
と言われるようになり、クラリネットを吹くことがさらに楽しくなりました。
“吹いてみたい曲がある”
その気持ちこそが、ソロ曲を始める最高のタイミングです。あなたのクラリネットで、ぜひ新しい音楽の扉を開いてみてください。



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