クラリネットと音楽生活

私とクラリネットの20年―楽器と歩んだ人生のリアルストーリー

20年以上続けて見えてきたクラリネットの魅力

中学1年の春、生で吹奏楽部の音を聞いた入学式。

クラリネットとの出会いは偶然でした。入学式の演奏で感動した私は、特に耳に入ってきたフルートの音に憧れて部室に向かいましたが、ちょっとしたことからクラリネットを吹いてみることに。

初めて音が鳴った瞬間の喜びは一生忘れられません。気づけば、クラリネットは私の人生の軸になっていました。

この時の嬉しさ!今でも思い出します。

私にとってクラリネットは音楽を楽しむ手段であるだけでなく、私に心の安静を与えてくれるものでもあります。

今回は、これからクラリネットを始めたいと思っている方、始めたばかりの方に向けて、私の経験から「クラリネットの魅力」をお伝えしたいと思います。

忍耐と努力の大切さを学ぶ

小さな進歩が大きな成果を生む

クラリネットとの出会いは偶然でした。フルートを吹きたくて部室に入ったのですが、一緒にいった友人が、「クラリネットに行きたい」と言うので、一人になることが不安だった私は、クラリネットの部屋について行くことに。

これがクラリネットとの出会いでした。マウスピースを受け取り、拭いてみますが、まったく鳴りません。周りの子たちが次々と音を出していく中、私は一人だけ取り残されていました。拭き始めてから、30分近く経ったころ、ようやく「ピー」と鳴らすことができました。

先輩たちが「大丈夫、焦らなくていいよ」と声をかけてくれたことで、諦めずに挑戦し続けることができました。あのときの悔しさと、やっと音が鳴った瞬間の達成感は、今でも私の原動力です。

当時、吹奏楽部の人数が多かったため、最初の1ヶ月は、全体演奏には参加せず、1年生はとにかく基礎練習。放課後の教室や、屋上で毎日音出し、基礎練習、時には体力作りのために学校内を走ったり、腹筋したりしたことも。

そんな毎日の練習を続け、最初に楽譜をもらったい、いよいよ先輩たちの横に座り、合奏したときは、とにかくたまらなく嬉しく、感動しました。この経験から、「日々の基礎練習」が「合奏の楽しさ」を生むことを学びました。

難しい楽曲への挑戦

初めて挑戦した難易度の高い楽曲は、途中で何度も挫折しそうになりました。しかし、焦らず、できない箇所を、メトロノームとにらめっこしながら、何度も何度も練習をしました。

特に思い出深いのは、高校1年生の時に、部の演奏会で任されたクラリネットソロの曲「メモリーズ・オブ・ユー」です。とても光栄でしたが、本番が近づくにつれ、プレッシャーに苦しみました。

この曲は、指遣いが難しいというよりは、表現力、音色、といったところで悩みました。先生にマンツーマンで指導をしていただき、思ったように表現できずに悔し涙を流したことも。家ではCDを何度も聴き、自分のイメージを膨らませ、何度も何度も吹く。その繰り返しでした。

本番、中学時代の吹奏楽の先生が聴きにきてくださったのですが、終わったあとに褒めていただき、がんばった甲斐があったと、今度は嬉し涙が出た、あの感動は忘れられません。

小さいホールで、観客がとても近く、とにかく緊張しました!

仲間と音楽を奏でる楽しさ

アンサンブルから学んだ協調性

クラリネットはソロ演奏も魅力的ですが、アンサンブルや吹奏楽では他の楽器との調和が求められます。音を合わせ、リズムを共有する中で、相手を思いやりながら共に音楽を作り上げる喜びを学びました。

中学2年生で、クラリネットパート内で選ばれアンサンブルコンサートに参加しました。当初は、それぞれが自分の音符を追うことに必死で合わせるという意識も薄く、バラバラの演奏でした。

うまくいかないところを人のせいにして、互いにイライラし険悪なムードになったことも。そんな時、他の楽器の仲間や先生が聴きに来てくれ、調整をしてくれました。「一人一人お互いの音をよく聞いて!」と言われたことで冷静になり、以下のことを決めました

・お互いの音をよく聴くこと

・場面毎でメインを吹く人を確認し、合図を決めること

このことで、まとまりが良くなり、演奏している自分たち自身も、とても気持ちよく演奏できるようになりました。

結果、県大会で金賞。県代表には選ばれませんでしたが、お互いの音を大切にする体験は、人生においても大切なものとなりました。

共通の目標が生む絆

20年間で多くのコンサートや発表会に参加しました。

特に、他者から採点をする機会でもあるコンクールに向けての練習は、単なる技術の向上だけでなく、仲間との絆を深める貴重な時間です。

「この曲を完成させたい」「本番で最高の演奏をしたい」という共通の目標を持つことで、メンバー一人ひとりの意識が自然と高まり、互いに支え合う関係が生まれます。

練習の中で意見がぶつかることもありますが、それを乗り越えるたびに信頼が育ちます。 一人では味わえない達成感や、音が重なった瞬間の感動は、共に努力してきた仲間がいてこそ得られるものです。

自己表現の場としてのクラリネット

感情を音に乗せる喜び

日々の生活では言葉にできない感情を、クラリネットを通じて表現することができました。嬉しいときも悲しいときも、クラリネットの音色が自分の心の声を代弁してくれるような気がします。

20年以上吹いてきて思うのは、「クラリネットは自分自身を映す鏡のような楽器」だということです。 嬉しいときは明るく、落ち込んでいるときはどこか沈んだ音が出る。 だからこそ、自分の心と向き合う時間にもなります。

私は、基礎練習やロングトーンをする時が、一番心が落ち着きます。音に集中するからでしょうか。嫌なことがあっても心を整える時間にもなっています。

独自のスタイルを築く自由

クラリネットの演奏には、演奏者ごとに独自のスタイルがあります。技術だけでなく、自分の個性や価値観を音に込めることで、より深い自己表現が可能になります。

それには、さまざまなタイプの曲にチャレンジすることをおすすめします。

私の音色は、ジャズやポップス向きと言われます。高校1年生で「メモリーズ・オブ・ユー」を任されたのも、それが理由だったんだと思います。

自分自身も、ジャズを演奏している時の方が心が躍ります。自分の好きな曲、メロディに出会えることは奏者にとっての幸せです。

クラリネットが教えてくれた人生の教訓

焦らず少しずつ進むことの大切さ

クラリネットは、努力が音に表れる楽器だと、私は考えています。 昨日より今日、今日より明日と、少しずつ音が変わっていくのを実感できます。 自分の成長が“音”として表れることが喜びとなりました。

仕事をする上においても、すぐに結果が出なくても、焦らずに取り組むことが苦ではないことは、クラリネットと向き合った経験が活きています。

音楽がもたらす癒しと喜び

クラリネットを演奏することは、自分自身だけでなく聴いてくれる人々にも喜びを与える力があると実感しました。その力を通じて、音楽が持つ癒しの力の偉大さを感じています。

音を出すことに集中すると、まるで瞑想のように気持ちが落ち着き、心が整うことが感じられます。嫌なことがあった時は、無心にロングトーンをしたり、静かなメロディを吹いたりします。

言葉にできないもやもやが、音に乗って少しずつ軽くなっていく感覚。特に好きなバラードを吹くと、心の奥がじんわり温まるのです。クラリネットは、私にとって最高のセラピストかもしれません。

まとめ:クラリネットがくれたもの

クラリネットは、一般の方には名前は知られていても、見た目や音色などはパッと思いつかない方が多く、決して派手な楽器ではありません。 でも、その音は、聴く人の心にそっと寄り添う力を持っています。

20年以上クラリネットと共に歩んできたからこそ、出会えた人や景色、感じた喜びや悔しさがあります。決して目立つ楽器ではないけれど、私の人生を豊かに彩ってくれた唯一無二の存在です。これからも、私だけの音を探し続けていきたいと思います。

これから始めるあなたにも、きっと「自分だけの音」が見つかるはずです。 焦らず、比べず、音と向き合う時間を楽しんでください。 そして、いつかあなたの音が、誰かの心に届く日が来ることを、私は心から願っています。

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